埼玉スタジアム2002のメインピッチでは、これまで、2002 FIFAワールドカップをはじめ、その後の、2006 FIFAワールドカップ予選、AFCチャンピオンズリーグ決勝などの国際試合、ヤマザキナビスコカップ決勝、浦和レッズのホームゲーム、全国高校サッカー決勝など数々の国内屈指の大会が開催され、2001年 3月26日の芝播種以来、現在まで、常に、質の高い芝生を維持しており、2005年、2009年、2013年、2016年には、Jリーグからベストピッチ賞を頂きました。 このコーナーでは、埼玉スタジアム2002の芝生がどのようにして美しく、また選手にケガがないようしっかりとした質を保っているのかを紹介していきます。
埼玉スタジアム2002のメインピッチの芝生は、寒地型芝草で一年を通じ常緑を保てる品種を選びました。寒地型芝草はすべて西洋芝と呼ばれるもので、ケンタッキーブルーグラス、トールフェスク、ペレニアルライグラスの3系統、7種類のタネを混合して播き育成しています。
ブルーグラスは、日本では競技場やゴルフコース、欧米では家庭、公園の芝生として広く利用されています。初期の育成が遅いのが欠点ですが、美しい濃緑色の葉が特徴です。
フェスク類の中では広葉の部類に入り、踏圧に強い性質がありますが、低刈に弱いのが欠点です。
発芽と初期生長が非常に早いので、使用範囲が広く、葉色の美しさは他の西洋芝より鮮やかです。ただ夏の暑さや湿気に弱いのが大きな欠点です。
3種類の寒地型芝草の種子を混ぜることにより、長所を引き出し、短所を補います。種間競争が生じることにより芝草の活性化がはかられ、病気や踏圧によるダ メージなどに備えての危険分散を図ることができます。
通常植物を育てるには、土を使用しますが、スタジアムでは、水はけが良い川砂を使用しています。鬼怒川産の4m/m ~ 0m/mの粒度を調整し、洗った砂を25cmの厚みで敷き均し、その上に種子を播き育成しました。
撒水作業
刈込作業
ライン引き作業
ゴール前芝貼り作業
補修用に六角形に切り抜くようす
芝補修直後のようす
試合翌日のディボット作業
スパイキング作業
コアリング作業
年間のピッチ使用日数は概ね60日(平成30年度は70日)です。約一週間に約1回の割合で使っている計算になります。芝生は、続けて使っていると疲れて元気がなくなり病気になったり、部分的にはげたりします。ラインズマン走行部分芝貼り作業
芝生の種類や試合日程によって毎年同じ時期に休ませるとは限りませんが、なるべく芝生の生育生理に合わせるようにしています。良質な芝生の維持は、気候と密接に関係しています。日照時間が少なくても生育できる一方で、夏の暑さに弱い冬芝(寒地型芝)の生育や冬の寒さによる生育を助けるため、地温コントロールシステムを使い、芝の生育に適した温度を維持しています。このシステムは、ピッチ内にパイプが約40km埋設され、寒い時期には温水を、夏の暑い時期に冷水を流し、地中の温度をコントロールする設備です。また、日照不足を補い、損傷した芝の回復を早めるため、高圧ナトリウムランプやLEDライトを使い、生育を促進しています。さらに高温多湿な夏場の通気性を高めるため、大型の送風機を設置しているほか、12月から翌年3月にかけて保温のため全面にシートをかけるなど、細心の注意を払い管理を進めていきます。これらによる芝の育成の状況は、目で確認するだけではなく、芝生の表面強度・引張強度・透水性の測定等、様々な角度から数値化し分析を行い、その結果を確認しながら作業を行います。
地温コントロールのパイプ設置時の様子
大型送風機による空気循環
芝の育成を促進するライト
埼玉スタジアムでは、すでに平成30年2月にラインズマン部分などに打ち込みタイプのハイブリッド芝を植えています。また、カーペットタイプのハイブリッド芝など国内外で導入されているハイブリッド芝を試験的に育成し実証実験していく予定です。
ハイブリッド芝の打ち込み作業
打ち込み式ハイブリッド芝